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更新日:2022年8月30日
1.中学校の「生活のきまり」(校則)には、髪型についての細かな規制があります。例えば、ある中学
校では、女子のポニーテールはいけません。髪を結う位置が高くてはならず、首に近いところで結わ
ねばならないというのです。
髪の毛の長さについては、男子は耳に髪がかかってはならないし、女子の場合、長い髪は結ったり、
まとめてもだめで、切ることを余儀なくされます。靴下の色は白以外認められず、上履きは学校指定
のものでなければならず、外履きは白を基調とした運動靴でなければなりません。上履きには氏名を
書いてはならず、決められた場所に生徒番号を書かねばなりません。女子の髪を束ねるゴムの色は黒
・紺・茶でなければなりません。
これらは、いくつかの中学校で用いられている「生活のきまり」に基づく指導の実例です。
何と細かな規制でしょうか。
ある中学校を訪問したとき、生徒玄関の靴箱に、同じような靴が無個性に、無機的に整然とならんで
いるのを見て、製品製造工場のようだと感じたことがあります。
細かな「生活のきまり」が貫徹された学校の一端をみたような気がしました。
2.他方で、中学校では、個性の尊重とか、一人一人がみんな違ってよいとか、多様性が尊重されねばな
らないと言われます。
しかし、前述した細かな「生活のきまり」は、個性の尊重とか、多様性の尊重といった理念と真っ向
から反するものです。
子どもたちは、個性を主張してはいけないというルールに従うように命じられ、他方で、個性的であ
れ、無個性ではいけないと指導されるのです。これでは、生徒達は、矛盾する二つのルールの間で身
動きが取れなくなってしまい、大きなストレスを受け、混乱することになります。まさに、ダブルバ
インド(二重拘束)の状態に陥ります。
このダブルバインドから抜け出るためには、個性の尊重とか、多様性の尊重というのは、お題目でし
かなく、無視してよいのだとして、矛盾を解消するほかないでしょう。
そうすると、個人の尊厳原理や人権保障といった私達の社会の根本的価値の重要性について、いくら
時間をかけて教育をしても、これらは大して意味のないものとして軽んじられ、子どもたちの心に響
かなくなってしまう危険があります。
3.さらに言えば、3年生に対しては、「生活のきまり」(校則)も、うるさくは言われなくなるとのこ
とです。
これは、ダブルスタンダード(二重基準)と言わざるを得ません。
ルールとして貫徹すべき実質的根拠や正当性があるならば、1年生だろうが、3年生だろうが、平等に
適用されるはずです。
1年生には厳しく、3年生には甘く適用されるという事実は、「生活のきまり」(校則)が、ルールと
しての正当性を欠いていることを裏付けています。
また、「生活のきまり」(校則)がダブルスタンダード(二重基準)で適用されることで、子どもた
ちは、ルールというものはご都合主義的に適用されるもので必ずしも守らなくても良いという誤った
メッセージを受け取ることになりかねません。
これでは、ルールは守られなければならないという、ルールのもつ最低限の意味すら没却されてしま
います。
ルールを守る気持ちを育むという教育目的にも反する事態です。
4.現在の中学校の「生活のきまり」(校則)には、学校生活の実態にそぐわず、生徒の心情を無視し、
一般社会の常識に照らしても妥当でないものが存在します。
何よりも、生徒の人権尊重の観点から、保護者、学校関係者、生徒が「生活のきまり」(校則)を見
直す必要があると思います。
子どもの権利擁護委員 沼田 徹
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