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更新日:2023年1月10日

スタッフコラム【令和4年度第9号】

ひとときの仮想劇場③
パリは燃えているか~映像の世紀~

 デスクワークの開始前のルーチンは、YouTubeで音楽を聴くことです。ひと時、パソコンの前は大きなコンサート劇場になります。
 先ほどまで聴いていたのは、NHK「映像の世紀」テーマ曲の加古隆作曲『パリは燃えているか』です。悲しみと切なさ、そして臨場感と緊迫感の漂う重厚な旋律の中に、希望や望みも感じられます。その時その時の情景が浮かび上がり、時代のうねりが一気に迫ってきます。動く映像として記録が残っているのは20世紀。その20世紀は「戦争の世紀」でもあります。
 加古本人も言っていますが、「燃える」は戦争や破壊の象徴です。パリを占領していたドイツ軍が撤退する際、ヒトラーはパリを徹底的に破壊しろと命令しました。ドイツ軍の指揮官判断でそれは実行されず、撤退後ヒトラーは『パリは燃えているか?』と怒り狂ったという逸話があります。パリの街は生き残りました。

 今年も「映像の世紀バタフライエフェクト」として放映されています。
 バタフライ効果(butterfly effect)は「ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こす」から使われ始めた言葉です。心理臨床でもよく使います。今回の番組では、「チョウの羽ばたきのような、一人一人のささやかな営みが、いかに連鎖し、世界を動かしていくのか?」にフォーカスを当てています。(先駆的に始めた青森市の「子どもの権利擁護」も、小さな営みが大きなうねりになるでしょうか?)

 映像プロパガンダ戦を推進したエイゼンシュテインは映像の怖さと可能性について述べています。「過去の経験から学ばなければならない。…些細なカットの違いには全体のカットを逆転させる力もある。だからこそ我々は思考を鋭く研ぎ澄まさなければならない。…映像モンタージュ(※1)は巨大な魔術である。」
 テーマ曲にも番組の些細な台詞にも、製作現場スタッフの良心と矜持(※2)を感じます。
 一方で、「歴史から学べるのは、人が決して歴史から学ぶことがない、ということだ」という言葉を聴いたことがあります。昨今のウクライナのハイブリット戦や国家的なプロパガンダ情報戦略をみていると、否定できないようにも思います。

 どうしたことか今は埼玉に住む大学時代の友人から、工藤正市写真集「青森1950―1962」が送られてきました。「ハナを垂らした関谷君が写っているんじゃないの」というコメント付きです。(みすず書房からの出版がすごい。みすず書房の本を10冊以上読破した人は優秀だという妄想を持っています。若い頃、メルロ=ポンティやミシェル・フーコーやジャック・ラカンで挫折したからです。)
 工藤正市は、生まれ育ち、一生を過ごした青森の風景と、身の回りにある日常の小さな喜びや幸せや哀しさの瞬間を仕事の合間に撮りつづけ、ほとんど誰に見せることなく、家族にも知らせないまま一生を終えたという紹介がありました。私の父の遺品の中にも、多量の白黒写真のネガがあったことを思い出しました。

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 特に、跨線橋界隈の一連の写真が圧巻です。私もハナを垂らして汚い格好で写っているのではないかと思いました。新市街と旧市街の接点である旧跨線橋、旧線路、りんご市場、第三振興街、古川界隈…の賑わい、露店、ぬかるんだ道、馬車、担ぎ屋、臭かったガード下。当時母は、跨線橋を越えて古川市場、カネ長、松木屋にいくことを「マチにいく」と言って、少し着飾って出かけていました。
 表紙の女の子の笑顔がとても素敵で、帯紙をとると、犬に服をかまれた女の子が登場する仕掛けになっています。笑ってしまいした。
 最も印象に残ったのは、子ども達の屈託ない笑顔です。何よりも子どもの数が多い。粗末な格好で、日に焼けた顔をしていますが、一様に、満面の笑顔で逞しい。年下の妹をおんぶしながら、路上で多くの異年齢の子どもと遊び回っています。
 1950年代から1960年代は、戦後間もないまだまだ貧しい時代でした。貧乏で混沌としていましたが、すべてが右肩上がりの時代で、子どもながらに明るい未来を予想していました。「今日より明日は豊かになる」「努力すれば報われる」と思っていました。"青森の子どもたちが燃えていた時代"すでに失われた情景なのかもしれません。
 「世紀の映像」は、時代を代表する有名人が主人公ですが、写真集「青森」は、本州最北端に暮らしている名もない人々が主人公です。


(次回の仮想劇場は「群青」です。)

子どもの権利擁護委員 関谷 道夫

※1モンタージュ…複数の映像の断片を組み合わせてひとつの連続したシーンを作る方法。
※2矜持(きょうじ)…プライド。自分の能力をすぐれたものとして他に誇ること。

 

 

問合せ

所属課室:青森市福祉部子育て支援課

青森市新町一丁目3-7 駅前庁舎2階・3階

電話番号:017-734-5320

ファックス番号:017-763-5678

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