更新日：2019年8月23日

スタッフコラム[令和元年度第3号]

絵本や昔話は、子どもと親の「コミュニケーションの玉手箱」です。関谷擁護委員が、4冊の印象深い絵本を紹介するコラムの第2弾です。

絵本の匂い！本のある風景！②

「あなたが小さい頃、好きだった、印象・記憶に残っている絵本やお話を挙げ、なぜ、どこが、どのように印象に残っているのか記述しなさい。子どもの頃の自分が、なぜその絵本やお話にひかれたのか、分析・考察しなさい。」というレポート課題に、保育者を目指す女子学生が取り上げていたのが『ちょっとだけ』（福音館）という絵本です。自分に妹が誕生したうれしさ。その一方で沸き起こった「嫉妬心」「葛藤」「戸惑い」に触れながら、幼いながらに感じた母と妹と自分との微妙な人間関係を、『ちょっとだけ』の絵本を織り交ぜて考察していました。
　
『ちょっとだけ』では、なっちゃんのおうちに赤ちゃんがやってきます。ママは赤ちゃんの世話に忙しくて、これまでのようになっちゃんをかまうことができません。お姉ちゃんになったなっちゃんは奮闘します。
本当はママの手を握りたいのだけれど、スカートを「ちょっとだけ」つまんで、牛乳をひとりでコップに「ちょっとだけ」入れます。夜にはパジャマを一人で着替えて、朝には髪を二つに分けて縛って、「ちょっとだけ」成功します。ブランコだって、つま先で蹴って「ちょっとだけ」揺らすことができました。なっちゃんは、ちょっとずつ頑張って「お姉ちゃん」になっていきます。
ママの世話にならずに懸命に頑張ろうとするなっちゃんですが、眠くなった時だけは、どうしてもママに甘えたくなります。「ママちょっとだけだっこして…」と遠慮がちにお願いします。ママはなっちゃんの細やかな心遣いも、お姉さんになったことで感じている寂しさも、十分に知っています。ママはやさしく笑って「ちょっとだけじゃなくて、"いっぱい"だっこしたいんですけれどいいですか？」と聞き返します。なっちゃんの答えはもちろん「いいですよ！」。なっちゃんは、この時ばかりは、ママの匂いをいっぱいかぎながら、いっぱい抱っこしてもらいました。

続く…


子どもの権利擁護委員　関谷　道夫

※続きは次回号で掲載します。