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更新日:2022年1月21日

スタッフコラム【令和3年度第9号】

揺らぐ“多様性と調和”③
~普遍的な価値観の曲がり角!?~

 私は、教員免許状を持っていませんが教育学部で学んでいました。当時の教育学部にはリベラルアーツ(※1)的な学際(※2)があったような気がします。臨床心理学を学びながら、ずっと教育全般に関心を向けてきました。
 これまで、子どもの権利擁護委員を含め、児童相談所長や学院長など学校教育と関わりの深い業務に従事し、その都度、いろいろな思いを抱いてきました。
 学校現場とは、少し距離のある立場から、今の教育システムを振り返って、現場で奮闘する皆さんにエールを贈りたいと思います。


 戦前と戦後の学校教育は、大きく変わったという人が多いのですが、明治以降、綿々と続いている組織構造、通底する普遍的な価値観が存在すると考えています。ちょっと古臭い言葉でいえば、中央集権制度と呼ばれる権力構造です。「全体」を優先する価値観と言っても良いかもしれません。これを下支えするものとして、学校における上意下達の権威的な構造や、家庭でのパターナリズム(父権主義、家父長制)が存在してきました。言葉を変えれば、「支配—被支配関係」「教育する—される関係」です。上には忖度(そんたく)して、周りとは同調させるシステムは持続してきたように思います。タテの支配・従属関係と、ヨコの"空気を読む"という精神風土で、安定した社会を維持し、秩序を保ってきました。
 実は、多少の不自由はあっても、こうした集団に順応することにより、いわゆる「護送船団(コンボイ)方式」で、教師も親も、さらに子ども自身も安全に守られ、最大限の恩恵を受けてきたのです。
 ここのプチ哲学は、「みんな仲良く」「勉強やスポーツを頑張る」「和を乱すな」「協調する」「出過ぎない」などです。これに適応できない子どもは、"みんな"から排斥又は看過されてきました。
 学校教育法は、個人の自己実現、個性・能力の伸長、創造性の涵養を掲げていますが、理念と現実には乖離があります。学校や企業だけでなく、家族の中にあっても児童虐待に象徴されるように、権力的な関係は存在します。812406


 問題行動の相談を受けた時は、一度は、逆境にある子ども・マイノリティからのSOS救助信号、危機を訴えるメッセージではないかと考えることにしています。
 少数派を圧倒的な力で押さえつけていた時代は、それはそれで安定していましたが、今や、子どもも大人も沈黙している時代ではありません。ネットなどオープンにするツールは数多くあります。それを隠蔽・無視したら、それ自体がバッシングの対象となってしまいます。
 本来、学校は試行錯誤を前提とした対人関係のトレーニングの場でもあります。まったく対立や争いのない世界が良いとは思いません。大事なことは、問題をどのように解決したか、その過程で何を学んだかです。
 教科書にも「ダイバーシティ&インクルージョン」(多様性と包摂)というコンセプトが登場します。「人材の多様性を認め、受け容れて活かす」こととされています。多様性を尊重するといっても、理念の共有環境整備を行わずに、無条件に受け入れるだけでは、むしろ混乱が生じてしまいます。成熟した多様性と調和を目指さなければ、秩序のない組織になって、沈没しかねません。ただの烏合の衆・カオス状態になってしまいます。
 「多様性と調和への挑戦」は、学校でも家庭でも、"模索と試行の苦しみ"の途上にあります。「子どもの権利擁護」と同じで、見えない到達点に向かって、真摯にトライするプロセスだと思っています。


(次が最終回です。どのような組織風土が望ましいか考えます。)

子どもの権利擁護委員 関谷道夫

※1リベラルアーツ…人間を広い意味で束縛から解放するための知識や生きるための力を身につける手法。
※2学際(がくさい)…研究などが異なる学問分野にまたがって関わる様子。

問合せ

所属課室:青森市福祉部子育て支援課

青森市新町一丁目3-7 駅前庁舎2階・3階

電話番号:017-734-5320

ファックス番号:017-763-5678

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